カード当てクイズ解法について考察



問題文再掲載。

・問題
52枚のトランプから2枚のカードを抜き出します。抜き出した2つの数字の積を書いた紙をA君に、和を書いた紙をBさんに渡しました。A君とBさんは互いの相手の持っている紙を見る事はできません。また、A=1、J=11、Q=12、K=13と解釈しています。次の会話から、元の2枚のカードの数字は何だったか判定しなさい。

A君「ぼくがもらった紙からは、最初の2枚のカードが何だったか、分からないな。」
Bさん「私にも、分からないわ。でも、あなたが分からない、という事は私にも分かるわ。」
A君「えっ、それなら分かったよ。」
Bさん「ああ、それなら私にも分かったわ。」



・解答
元の2枚のカードはAと4のカードだと断定できる。
A君は4、Bさんは5と書いた紙を受け取っていた事になる。


・解法について
答案としての解答は「かつ」もしくは「えび」のページを見てもらうといいでしょう。
どちらも論理的な欠陥が無いので、文句の付けようもありません。
ここでは、解法の考え方をおさらいしておきます(本来、頭の中で考えて、答案には書かない部分)。

まず、和と積から元の数を推測する、というのは数学でもよくある話です。
今回の場合は正の数、しかも1〜13までの自然数に限られているので、いざとなったら総当りで調べても何とかなりそうです。

さて、1〜13のうち2つの組み合わせというと、重複を除いて91通りあります。
どうすれば簡単に条件を絞り込めるか、と考えると、Bさんの1回目の発言に注目すると良いでしょう。
要は、「和からは元の数を断定できず、しかも、積からも断定できないという事が和からも分かる」という訳です。
つまり、例えば和が9であると仮定したとします。
この時、2と7のカードを引いていれば和は9になりますが、積である14を13までの自然数2つの積で表そうとしても(2,7)しかありません。
これはBさんの1回目の発言と矛盾するので、「和は9ではない」事が分かります。

ここまで気づけば、この問題は半分解けたようなものです。
これから和の条件を絞るわけですが、和だけを見ても断定できないパターンは、和が4〜24の場合です。
これだけだと考えうるパターンは様々ですが、例えば和が大きい場合を考えると楽です。
例えば、和が24の場合を考えると、カードのパターンとして(11,13)、(12,12)があります。
ここでは分かり易い(12,12)を敢えて無視して、(11,13)の方に注目します。
13は素数かつ、今回の場合は最大の数でもあります。
13と何かの数の積を、別のパターン(しかも、13までの自然数を使って)で因数分解しようとしても不可能です。
つまり、和という立場から13を引いている可能性を考えても、積にすると唯一の表現でしか表せません。
この事から、13を足しているかもしれない和、つまりは和が14以上の場合はあり得ない事が分かります。
この時点で、和は4〜13までのどれかである事まで絞れました。

同様に、素数11,7についても同じ事が言えて、和が8〜13の場合も棄却されます。
(何故そうなるかと言うと、例えば7に最小の素数2をかけても14になってしまい、カードとしてはあり得ないからです)。

確かに総当り戦法と比べると理解はし辛いですが、今回の場合でも既に和が7以下である事まで分かってしまうので、理論の一般化はし易いと思います(そして、数学科生にはこういう思考が求められます)。
ともあれ、和が4〜7のいずれかという事まで絞れたので、あとは総当りでも良いでしょう。


以上、「いまいち言っている事が分からない」という方は、どんどん質問してもらっても構いません。


*補足
実は、上の問題は1番として出題されていて、2番として

2.これを一般化しなさい。(たぶん未解決問題)

とあるのです。
何をどう一般化するか、については書かれていないのですが、恐らく
「2人のセリフはそのままで、カードの数を13までではなく、任意の自然数nとする」
という意味だと思います。

ただ皆さんもご存知のように、素数の法則性については現時点では未解決問題です。
今では素数の個数を近似する理論があるくらいで、「この式を使えば素数が順に求まる」というものは発見されていません(あるのかどうかも分かりません)。
よって、上のような方法で、自然数n内の最大の素数を使って絞り込む・・・という方法は一般化不可能です。
例えば、具体的に「カードの数は100まで」とかであれば理論上は解けるのですが、この場合は総当りはほぼ絶望的なので、上の方法が役に立つでしょう(そうなる組が存在するかどうかの証明も含めて)。

・・・というのが私の考えですが、これについても意見があれば随時どうぞ。


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